コーヒーが冷めないうちに
コーヒーが冷めないうちに 川口俊和
過去に戻ることが出来る喫茶店で起こる四人の女性の物語。
本屋大賞にもノミネートされた作品です。
四回泣けますとか帯びに書かれてますが、恐らく一回も泣けないでしょうから気を付けて下さい。*個人の感想です。
悪い点から先に挙げてしまうと、まず文章に面白みがない。
私は小説を読むとき一番期待するのは文章の面白さ、表現の面白さです。
それは別に文章が上手か下手かではなく、単に面白い文章かそうでないかという問題です。
本作はまるで面白い表現がありません。
次にストーリーがありきたりすぎる上に泣かせようと必死なところがよくありません。
だいたいそうだろうなぁと思う通りにストーリーが進みます。
登場人物の名前が計とか数とかで名前なのか文章なのか分かりづらいのもよくないと思います。
ややこしい上に特にその名前である意味も感じません。人物の名前に意味を求めるというのも無茶な話かもしれませんが。
また過去に戻れるということに沢山のルールがあり、それがまた説明臭くてややこしい上にオムニバスの四話ともくどくど説明するのでうんざりします。
と、まあ、かなりディスりましたが、いいところももちろんあります。
装丁がお洒落ということ。
……だけじゃないです。
作者が劇作家というだけあって舞台は徹底して喫茶店内部だけというストイックさがいいです。
それも店のあちこちにカメラ(視点)が動かず、ほぼ定位置にあるのがすごい。
最初から最後までそれを貫いています。
また登場人物がそれぞれに絡み合い、無駄な人物なく結ばれてるのが、なかなか見事です。
広がりよりも深さで勝負する作品ですね。
また作中で語られない謎というものがあり、その辺りにも私は深さを感じました。人によっては解決されない疑問が残ったと嫌う人もいるでしょうけど。
いいところと悪いところを書かせて頂きましたけど、結論を言うと私はあまり面白い小説とは思いませんでした。
五十万部も売れてるらしいですが、はっきり言って驚きです。
期待せずに文庫で買ったら「まぁまぁかな?」という感じでしょうか。
四六判で買うほどのものではありません。