読んだ本や観た映画について個人的な感想をだらだら語る日記

とにかく読んだ本や映画の感想を垂れ流してます。いいところも悪いところも語るので時に辛口のときもあります。

君の膵臓をたべたい

君の膵臓をたべたい 著:住野よる


200万部を超えるモンスター級のヒットを飛ばした住野よるのデビュー作。

膵臓の病気に罹り余命幾ばくもないヒロインと、暗く物静かな主人公の出逢いから別れまでが描かれている。

賛否両論吹き荒れるレビューも人気作ならではだと思う。
よく言われる文章力のなさというのはそれほど感じなかった。
そう聞かされていたからかもしれないが、むしろ悪くないとさえ感じた。

主人公とヒロインの会話のやり取りは最初ちょっと恥ずかしいほど気取ったように感じたものの、ヒロインの膵臓ジョークが始まってからはなかなか面白かった。

医学の進歩で膵臓を病んでる人もふつうに暮らせる世界になったらしい。それ自体は全然いいと思うのだが、なぜかここ最近「少し未来の世界」と書かれることが多くなった。
本文で少し未来の世界と書かれていなかった気がする。
本文に一行でいいから少し未来の世界と入れておくべきだった。これは作者と言うより編集者の落ち度かなと思う。

私的にはヒロインの死因が引っ掛かって仕方ない。
何の必然性があったのかよく理解できない。

しかし青々しく爽やかなストーリーはとても好感がもてる作品だと思う。

作品に対して良し悪しを述べるのは個人の勝手なのでいいのだが、よく聞かれる「タイトルだけで売れた」とか「宣伝だけで売れた」というのはピント外れた意見だ。

宣伝して200万部のベストセラーが生まれるなら、どこの出版社でもする。
タイトルだけで目につけばみんな買うなら何の苦労もない。

こんな嫉妬混じりの誹謗中傷を受けるのもヒット作ならではの苦悩なのだろうか?

どれだけ目についても、有名になっても、中身が伴わなければ売れない。
きっかけはもちろん宣伝や話題性、そしてなによりも運がよかったのだろうが、それに応えられる内容もあってこそだと思う。
200万部の内容かというのは不毛な話なので割愛するが、逆に言えばもっと内容がよければ三百万部も四百万部も売れただろう。

本作の売り上げを伸ばせた一番の要因は若い層に買い支えられたことだろう。
そしてそれを可能に出来たのは青臭さじゃないかなと思う。
若い世代が頷き、共感できる程度の思想が受けた。それは大人からみれば青臭く、チープに思えるかもしれない。
しかしだからこそ若い人達には響いたのである。

それは歳を重ねた作家には書けない。
書こうとしても躊躇するだろうし、ついもっと深いことを書いてしまうだろう。
プロの作家はそれを圧し殺して青臭いものを書けるほど柔軟でもポリシーを捨てられるものでもない。
それにやろうとして出来るほど簡単でもないだろう。

『よるのばけもの』もそうだが、住野よる先生の思想は綺麗事と理想論を青臭く書ききって、そこに陰鬱な空気も滲ませる。
それが時代に愛されたのだろう。
このようなヒット作が多く生まれれば日本の小説の未来も明るい。
これからもこのようなヒット作かま生まれてくれることを切に願う。