読んだ本や観た映画について個人的な感想をだらだら語る日記

とにかく読んだ本や映画の感想を垂れ流してます。いいところも悪いところも語るので時に辛口のときもあります。

君は月夜に光り輝く

君は月夜に光り輝く 著:佐野徹夜

月の光に当たると身体が光って見える「発光病」に冒された少女と物静かなクラスメイトの男の子の恋の物語。
発光病というのはもちろん架空の病で、そしてもちろん不治の病だ。
その設定を聞いたとき、優れているなと感じた。
病気で死んじゃう系のお話はその病気について詳しくないといけないし、なによりどうしても病に伏せた人が元気だとおかしいというジレンマに陥るからだ。

ところが、このヒロインは何と寝たきりである。
せっかく架空の病気にしたのだから歩き回ればいいのに、と思った。しかしそこにはすごい仕掛けを用意していた。
ヒロインが死ぬ前にしたくても出来ないことを主人公が代わりにしていくという展開だ。

これはとても斬新だし、面白い試みだ。恋の話なのになにかを経験していくのは男の子の方だけ。安楽椅子探偵ならぬ要安静ベッド彼女だ。

この二つの設定だけでもこの小説はすごいと感じた。間違いなく名作だろうと確信した。

実際、名作だった。
大賞受賞作らしいが、頷けるものだった。

優れたセンテンスも散りばめられ、物語の起伏も適度にあり、ラストの締め方も秀逸だった。

敢えて苦言を呈すれば盛り上がっていくのがやや遅いこと、ヒロインが喜怒哀楽激しく変わった子という設定らしいがいまいち伝わらないこと、主人公がよくありがちな造詣ということ。
くらいだろうか?

でもそれらは取るに足りない問題点かなと思う。

もし未読で読むべきか迷っている方がいれば是非読んで貰いたい。
そんな作品だ。