流星ワゴン
流星ワゴン 著:重松清
死にかけた人だけが乗れるワゴンに乗って時間の旅に出るお話。
主人公が同い年の父と会い、友達になるという展開がメイン。
ライトノベルやWeb小説とはやはり圧倒的に描写力が違う。
なんてことを書くと非常に反感を買うのだろう。
だけど敢えて言うが、圧倒的に描写力が違う。
嫌味とか皮肉ではなく、本気で思う。Web作家もたくさんこういう描写のいい小説を読んで学べばいい。
繰り返すが嫌味とか皮肉ではない。実力をつければ更にいいものが書けるからだ。
なにせ既存の作家には思い付きもしない奇想天外かつユニークなストーリーや設定が思い浮かぶ。そこに描写力があれば更に素晴らしいものが書けるのだから。
ぶっちゃけていえば出版社だってちゃんとした文章を書ける人の方がいいと思っている。まあレーベルにもよるだろうけど。
もしあなたに出版履歴があり、編集者と話したことがあり、そんな『描写力がある方がいい』なんて話を聞いたことないというなら、残念ながらあなたに描写力がないという証だ。
考えてもみて欲しいが、出っ歯の女が合コンに来て、「俺出っ歯の女嫌いなんだよね」という男はあまりいないはずだ。
「出っ歯なんて矯正で何とでもなる。それよりおっぱい大きい方がいい」と胸部をガン見しながらささやいてくるはずである。
話がずいぶんと逸れてしまったが、とにかくそんなWeb作家さんにこういった優れた描写のある作品を是非読んで貰いたい。
読みながら自分の作品とどう違うか、ゆっくりと考えて貰いたい。
さて流星ワゴンだが、非常に鬱要素の高い作品となっている。
もう見てられないくらいに主人公が痛ましい。だからこそ言葉が響いてくる。
ストーリーに爽快感というものは皆無だが、代わりに深みを感じた。
さほど泣けるというものではないが、心に響くものはある。
過去にドライブしてやり直せない人生をもう一度体現するという設定だけみればライトノベル調だが、どう描くかでずいぶんと違う。
そんなことを味わうのもいいかもしれない。